災害協定とは? その内容と目的、連携事項を詳しく解説
災害が発生した際に、被害を最小限に抑え、迅速な復旧・復興につなげるためには、行政だけでなく、企業やNPO、地域住民など、様々な主体との連携が不可欠です。そこで重要となるのが「災害協定」です。
災害協定は、災害発生時における人的・物的支援について、地方公共団体(自治体)と民間事業者、関係機関、または自治体間で事前に締結されるものです。これにより、有事の際に、それぞれの得意分野やリソースを最大限に活かした協力体制を築くことができます。
災害協定の主な締結主体
災害協定は、主に以下のような主体間で締結されます。
地方公共団体(国、都道府県、市町村)
民間企業・事業者(物流会社、建設会社、小売店、通信会社、インフラ関連企業など)
NPO・ボランティア団体
大学・研究機関
他の地方公共団体(自治体間の相互応援協定)
社会福祉協議会
災害協定の主な内容と連携事項
災害協定で定められる内容は、締結する主体や自治体の地域特性によって多岐にわたりますが、一般的には以下のような項目が含まれます。
1. 物資の供給・輸送
食料、飲料水、生活必需品(毛布、タオル、衛生用品など)の優先的な供給
建設資材(土のう袋、スコップなど)、作業用品(ヘルメット、軍手など)の供給
医薬品の供給
災害対応型自動販売機の設置
物資の輸送・配送(トラック、ヘリコプターなど)
2. ライフライン・インフラの復旧・確保
電気、ガス、水道などのライフライン復旧への協力
通信網(携帯電話基地局、Wi-Fi環境など)の確保・復旧
道路網(緊急交通路の確保、道路啓開作業)の整備・復旧
仮設住宅・避難所の提供や、移動式宿泊施設の提供
公共土木施設(道路、橋梁、河川など)の応急仮工事、復旧工事
3. 医療・救護・衛生
医療救護班の派遣、応急手当、医療情報の収集・提供
傷病者の搬送、収容先医療機関の確保
防疫業務、し尿収集運搬
遺体の取扱い
4. 情報通信・広報
災害情報の迅速な提供(行政機能低下時の情報発信支援)
避難情報、安否確認システムの活用
通信手段の確保(衛星電話など)
5. 人員・資機材の提供
専門的な技能を持つ職員の派遣(土木技術者、医療従事者など)
重機、車両、ヘリコプターなどの資機材の提供
グラウンド(一時避難場所、ヘリ離着陸拠点)の開放
防災訓練への協力・共同実施
6. 被災者支援
帰宅困難者の避難収容
避難行動要支援者(高齢者、障がい者など)の避難支援
被災者への運動支援(避難所での健康体操など)
子どもの一時預かり
災害協定の目的
災害協定を締結する主な目的は以下の通りです。
被害の最小化と迅速な応急対応: 災害発生直後から、自治体だけでなく、協定を結んだ企業や団体が連携し、人的・物的支援を行うことで、被害の拡大を防ぎ、初期対応を迅速化します。
地域防災力の向上: 民間企業などの持つノウハウやリソースを活用することで、行政だけでは対応しきれない多様なニーズに応え、地域全体の防災力を高めます。
事業継続性の確保(BCP): 企業側にとっても、災害協定は自社の事業継続計画(BCP)を強化する側面があります。従業員の安全確保や、事業活動の早期復旧につながります。
官民連携の強化: 平時からの連携体制を構築しておくことで、災害時だけでなく、平時の防災活動や地域貢献にもつながります。
まとめ
災害協定は、地域社会全体のレジリエンス(回復力)を高めるための重要な仕組みです。単なる「いざという時のための約束事」ではなく、平時からの関係構築や訓練を通じて、実効性のあるものにしていくことが求められています。
近年では、多様な主体との連携が不可欠であることから、協定の対象分野も広がりを見せています。