【専門家が解説】子どもの命を守る!幼稚園・保育園の「防災・危機管理」徹底ガイド
大規模な自然災害や予期せぬ事故・事件は、いつどこで起こるかわかりません。特に、大切なお子さんの命を預かる幼稚園や保育園(幼保施設)では、「もしも」の時に備えた徹底的な危機管理と防災対策が不可欠です。
このブログ記事では、幼い子どもたちの安全を最優先するための具体的な防災マニュアルのポイント、効果的な避難訓練の実施方法、そして災害時の保護者との連携について、詳しくわかりやすく解説します。
お子さんが安心して毎日を過ごせるよう、幼保施設の防災力を一緒に高めていきましょう。
1. 最優先すべきは「子どもの命」— 災害に強い施設環境づくり
災害が発生した際、まず子どもの安全を守るためには、日頃からの施設環境の整備が重要です。
1-1. 施設内の徹底した安全対策(ハード面)
家具・備品の固定:ロッカー、本棚、くつ箱、ピアノ、テレビなどは、転倒防止金具やバンドで確実に固定し、落下物による怪我のリスクを最小限に抑えます。
ガラス飛散防止:窓ガラスや照明器具には、飛散防止シートを貼り、地震などで割れた際の破片による怪我を防ぎます。
避難経路の確保:出入口や廊下、非常用すべり台の周辺には物を置かず、避難経路を常に安全でスムーズに使える状態にしておきます。
危険物の管理:子どもの手が届かない場所に危険な道具や薬品を保管し、収納棚は中身が飛び出さないよう工夫します。
1-2. 災害発生直後の初期対応の鉄則
地震や火災などが発生した直後の数秒間が、生死を分ける重要な時間です。
災害の種類 | 発生時の行動(保育士・幼稚園教諭の対応) | 子どもへの指示・行動 |
地震 | 揺れがおさまるまで子どもから離れない。火元を確認し、ガス元栓を閉める。窓・ドアを開けて避難経路を確保。 | **「ダンゴムシのポーズ」**で机の下など安全な場所に隠れ、頭をしっかり守る。(乳児は布団やクッションで保護) |
火災 | 火元と避難経路を即座に確認し、職員間で共有。消火器で初期消火を試みる。 | 「口を覆う」(ハンカチやタオル)**「姿勢を低くする」**で煙を吸い込まないように避難する。 |
津波・水害 | ラジオ等で正確な情報を収集し、速やかに上階または近隣の高台へ避難誘導する。 | 先生の指示をよく聞く。慌てず、静かに移動する。 |
【合言葉「おかしも」の徹底】
子どもたちには「おさない」「かけない(走らない)」「しゃべらない」「もどらない」「ちかづかない(火元に)」などの合言葉を、日頃の訓練を通じて理解させることが大切です。
2. 命を守る力を育む「避難訓練」の重要性
避難訓練は単なる形式的なものではなく、子どもたちが災害時に冷静に行動できる力を育むための重要な教育活動です。
2-1. 訓練の多様化とリアリティの追求
毎月決まった曜日・時間に行うだけでなく、あらゆる状況を想定した訓練を実施しましょう。
予告なし訓練:抜き打ちで訓練を行い、職員の初期対応力と子どものとっさの行動をチェックします。
時間帯の想定:お昼寝(午睡)中、散歩中、園庭での自由遊び中など、様々な活動時間での避難をシミュレーションします。
災害の複合化:地震の後に火災が発生するなど、複数の災害が連鎖した場合の対応を訓練します。
不審者対応訓練:警察と連携し、不審者侵入時の子どもを安全に避難させる手順、職員間の合言葉による連携、さすまたなどの護身具の使用法を確認します。
2-2. 子どもの年齢に合わせた伝え方の工夫
幼い子どもにとって、地震や火災の話は怖いものです。恐怖心を与えすぎず、楽しみながら大切なことを学べる工夫が必要です。
絵本や紙芝居:イラストや分かりやすいストーリーを通じて、災害時の避難行動の重要性を伝えます。
劇やクイズ:保育士が子どもの役を演じたり、クイズ形式で「この時どうする?」と問いかけたりすることで、主体的に考えさせます。
防災頭巾の活用:防災頭巾を「秘密のヒーローキャップ」のように親しみやすいものとして紹介し、自分でかぶる練習をします。
3. 災害時における保護者連携と引き渡し訓練
大規模災害時は、電話や交通網が麻痺し、情報が錯綜します。子どもを確実に保護者のもとへ引き渡すための仕組み作りは、幼保防災の最重要課題の一つです。
3-1. 確実な「引き渡し訓練」の実施
引き渡し訓練は、園と保護者が一体となって防災意識を高め、緊急時の連携を確認する貴重な機会です。
引き渡しルールの明確化:原則、徒歩での迎え入れ、本人確認のための書類(引き渡しカードなど)の提示を徹底します。
代理人の登録:保護者が迎えに来られない場合に備え、事前に代理人(祖父母など)を複数名登録し、その確認方法も訓練します。
連絡手段の確認:災害用伝言ダイヤル、メール、アプリなど、複数の情報伝達手段を訓練時に実際に使用し、保護者に周知します。電話が繋がりにくい状況を想定し、園の掲示板やウェブサイトへの情報掲載ルールも決めておきましょう。
3-2. 園の機能継続とライフライン対策
園が一時的に避難所となる可能性も想定し、「3日分」の自立した生活が送れるよう備蓄を徹底します。
カテゴリ | 備蓄のポイントと具体例 |
食料・水 | 職員分も含め3日分を確保。水は飲料水だけでなく調乳・調理用水も。アルファ化米、パンの缶詰、レトルト離乳食、液体ミルクなど、年齢やアレルギーに対応できるものを準備。 |
生活用品 | 簡易トイレ(断水時用)、紙おむつ、おしりふき、ウェットティッシュ、生理用品、毛布・防寒シート、ガムテープ、ポリタンク。 |
緊急用品 | 懐中電灯(ランタンタイプ)、ラジオ、予備電池、救急セット、おんぶ紐・抱っこ紐(乳児用)、小銭(公衆電話用)、子どもたちの緊急連絡先ファイル。 |
災害への備えは、決して「お金がかかる」「面倒だ」と後回しにして良いものではありません。子どもたちの笑顔と安全な未来を守るために、施設全体で危機管理の意識を共有し、日々の備えを怠らないことが何よりも重要です。