災害時の公的支援:被災したときに「もらえるお金・借りられるお金」の全知識
大規模な災害に見舞われたとき、まず命を守る「自助」、地域で助け合う「共助」が重要です。しかし、生活再建の最終的な支えとなるのは、国や自治体による「公助」、すなわち公的支援制度です。
災害直後は情報が錯綜しがちですが、公的支援は申請期限や対象要件が定められています。被災者の方が、落ち着いて必要な手続きを進められるよう、主要な支援制度を「お金の支援」「住居の支援」「生活の支援」の3つの柱で分かりやすく解説します。
柱1:お金の支援制度 — 「もらえる」と「借りられる」の違い
公的なお金の支援には、返済不要の「給付(もらえるお金)」と、返済が必要な「貸付(借りられるお金)」の2種類があり、用途や所得制限が異なります。
1. 給付(もらえるお金):生活再建の基盤となる支援金
| 制度名 | 根拠法・所管 | 支援内容 | 支給額(複数世帯) |
| 被災者生活再建支援金 | 被災者生活再建支援法(内閣府) | 住宅の被害程度や再建方法に応じて支給される、生活再建の基盤となる支援金。使途に制限なし。 | 最大300万円(基礎支援金+加算支援金) |
| 災害弔慰金 | 災害弔慰金の支給等に関する法律(厚労省) | 災害により亡くなられた方の遺族に支給される。 | 生計維持者:500万円、その他:250万円 |
| 災害障害見舞金 | 災害弔慰金の支給等に関する法律(厚労省) | 災害により重度の障害を負った方に支給される。 | 生計維持者:250万円、その他:125万円 |
【特に重要:被災者生活再建支援金の内訳】
| 支援の種類 | 被害の程度(全壊・解体・長期避難の場合) | 支給額 |
| 基礎支援金 | 住宅の被害の程度に応じて支給 | 100万円(大規模半壊は50万円) |
| 加算支援金 | 住宅の再建方法に応じて支給 | 建設・購入:200万円、補修:100万円、賃借:50万円 |
※単身世帯の場合、上記金額の4分の3が支給されます。中規模半壊世帯も、加算支援金のみが支給対象となる場合があります(対象災害に限定あり)。
2. 貸付(借りられるお金):生活の立て直しに必要な資金
| 制度名 | 根拠法・所管 | 支援内容 | 貸付限度額 |
| 災害援護資金 | 災害弔慰金の支給等に関する法律(厚労省) | 災害による負傷、または住居・家財に被害を受けた世帯主に対し、生活の立て直しに必要な資金を低利で貸し付ける(所得制限あり)。 | 最大350万円 |
| 災害復興住宅融資 | 住宅金融支援機構 | 災害で滅失・損傷した住宅の建設、購入、補修に必要な資金を低利で融資する。 | 建設・購入の場合:1,650万円など(融資額は再建方法による) |
柱2:住居の支援制度 — 応急的な住まいと修理
住宅が被災した際の公的支援は、「応急的な住居の提供」と「自宅の応急修理」の2つに分かれます。
| 制度名 | 根拠法・所管 | 支援内容 | 対象要件 |
| 応急仮設住宅の提供 | 災害救助法(内閣府) | 自宅が全壊などで住めなくなった被災者に対し、一時的な住居(プレハブ建設型や民間賃貸住宅借り上げ型)を無償で提供。 | 自力で住宅を確保できない世帯 |
| 住宅の応急修理制度 | 災害救助法(内閣府) | 住宅が半壊以上で、そのままでは住めない場合に、居室、台所、トイレなど日常生活に必要な最小限度の部分を自治体が応急的に修理する(費用は自治体が負担)。 | 半壊以上の被害を受け、自ら修理する資力がない世帯(上限額あり:約70万円前後) |
柱3:生活再建に向けたその他の支援
| 支援の分野 | 支援制度の例 | 支援内容 |
| 税金・保険料 | 雑損控除、災害減免法による所得税の軽減、各種保険料の減免 | 災害による損害を所得から控除、または所得税・住民税などを減免・猶予する。 |
| 債務整理 | 自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン | 住宅ローンなどの既往債務について、自宅や手元資金の一部を残して免除・減額する(専門家による支援も無償)。 |
| 教育 | 奨学金制度の特例(日本学生支援機構)、就学援助 | 被災により学費の支払いが困難になった学生・生徒に対し、奨学金の貸与や授業料等の減免を行う。 |
| 生活福祉 | 緊急小口資金、総合支援資金(特例貸付) | 一時的に生活が困難になった低所得世帯に対し、生活費などの貸付を行う(社協が窓口)。 |
【重要】支援を受けるための最初のステップ:「り災証明書」の取得
ほとんど全ての公的支援制度を利用する際には、自治体が発行する**「り災証明書」**が必要です。これは、住宅の被害状況を公的に証明するもので、申請は以下の手順で行います。
申請: 災害後、速やかに市町村の窓口に申請します。
被害認定調査: 自治体の職員が住宅を調査し、被害の程度(全壊、大規模半壊、半壊など)を判定します。
交付: 調査結果に基づき、証明書が交付されます。
災害直後は混乱しますが、支援制度の存在を理解し、まずはり災証明書の申請を行うことが、生活再建への第一歩となります。詳しい手続きや申請期限は、お住まいの市町村の窓口にご確認ください。