💰 労働時間とみなされる?会社の「研修中」の給料と法的な関係
会社の研修期間中に給料(賃金)が支払われるかどうかは、その研修が**「労働時間」**に該当するかどうかで決まります。結論から言うと、会社が業務上必要と義務付けた研修であれば、給料の支払い義務が発生します。
研修は、単なる自己啓発ではなく、「労働者のスキルアップ」という会社の資産形成につながる投資であり、適切な賃金を支払うことは、法令遵守の観点からも、社員のモチベーション維持の観点からも非常に重要です。
⚖️ 研修と給料の法的な判断基準
研修時間が労働時間に当たるかどうかは、労働基準法に基づき、主に「使用者の指揮命令下に置かれているか」という点で判断されます。
1. 賃金支払い義務が発生する研修(労働時間とみなされるケース)
以下の条件に当てはまる場合、その研修時間は労働時間とみなされ、会社は通常の業務と同様に給料を支払う義務があります。
参加が強制されている場合:
業務命令として研修への参加が義務付けられている(例:新入社員研修、コンプライアンス研修、管理職研修)。
参加しないと業務の遂行に支障が出る、または不利益な評価(人事評価の低下など)を受ける場合。
入社前研修でも同様:
内定者に対し、労働契約に基づく業務命令として参加が義務付けられている入社前研修も、労働時間とみなされ、給料の支払いが必要です。
所定労働時間内の研修:
就業規則などで定められた所定労働時間内に実施される研修は、原則として業務の一環と見なされます。
2. 賃金支払い義務が発生しない可能性がある研修(任意参加のケース)
以下の条件がすべて満たされ、実質的に労働者の自由な意思に委ねられている場合は、労働時間とはみなされず、給料の支払い義務は発生しません。
完全に任意参加であること:参加しなくても、業務遂行や人事評価に一切不利益がないことが明確である。
場所や時間の拘束がないこと:会社からの具体的な場所や時間の指定、指揮命令がない。
業務との関連性が低いこと:あくまで個人の趣味や自己啓発を目的とした内容である。
【注意点】
会社が「任意参加」と謳っていても、実際は「無言の圧力」や「不参加による不利益」がある場合は、実質的な強制参加と判断され、給料不払いは労働基準法違反となる可能性が高いため、注意が必要です。
💵 研修期間中の給与の額と残業代
研修期間中であっても、労働時間と認められた場合、給与の支払いには法的なルールが適用されます。
1. 研修期間中の給与額について
最低賃金:研修期間中であっても、最低賃金法が適用されます。給与は、地域別最低賃金または特定最低賃金を下回ってはなりません。
本採用時より低い額:本採用後の給与額より低い額を設定すること自体は可能です。ただし、雇用契約書や就業規則などでその旨を明確にし、事前に労働者の同意を得ておく必要があります。
2. 残業代と割増賃金
法定労働時間の超過:研修時間が法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間)を超過した場合、会社は研修期間中であっても**残業代(割増賃金)**を支払う義務があります。
深夜労働:研修が深夜(原則として22時~翌5時)に及んだ場合は、通常の賃金に加えて深夜割増賃金を支払う必要があります。
📋 企業の研修コストと投資対効果(ROI)
研修は社員のスキル向上という**「将来への投資」であるため、企業側は研修費用をコストではなく資産**として捉えることが重要です。
| 研修タイプ | 費用相場(一例) | 費用の内訳 |
| 新入社員研修 | 33万円~38.5万円(中央値)/人 | 講師料、会場費、教材費、賃金 |
| 管理職研修 | 19.8万円~44万円(中央値)/人 | 講師料(専門コンサルタント)、教材費、賃金 |
| eラーニング | 3万円~15万円/人 | 初期費用、月額利用料、コンテンツ費用 |
費用相場:研修の形式(集合研修、オンライン、eラーニングなど)、期間、講師の質によって大きく変動します。上記の相場には、従業員に支払う賃金(人件費)は含まれていないことが多いため、給与も含めたトータルコストで考える必要があります。
賃金は会社負担が原則:労働時間とみなされる研修にかかる給与は、会社が負担するのが原則です。研修費用を社員に請求したり(損害賠償予定の禁止に抵触する可能性があります)、退職時に返還を求めたりする制度は、労働基準法違反となるリスクが高いです。
賃金を適切に支払い、社員が安心して研修に集中できる環境を整えることが、高い学習効果と企業の生産性向上につながる最善の戦略と言えるでしょう。
研修期間中の給与支払いについて、より詳細な法的な判断やトラブル回避策に関心がある場合は、専門家への相談をおすすめします。